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ハイパースペクトルカメラにおける水分測定と活用事例

 

ハイパースペクトルカメラは目には見えない波長を分析することができるカメラで、様々な分野で導入が進んでいます。

ハイパースペクトルカメラの活用で分析できることの一つに、水分量の測定があります。

・そもそもハイパースペクトルカメラやマルチスペクトルカメラとは何か
・なぜハイパースペクトルカメラで水分量を測定できるのか
・水分を分析することでどのようなことに活用できるのか
この記事では主にこれら3つの疑問に焦点を当てて、詳しく紹介をしていきます。

 

ハイパースペクトルカメラとは?

ではまず、ハイパースペクトルカメラとはいったいどのようなカメラなのかを確認しましょう。

 

ハイパースペクトルカメラの概要

「ハイパースペクトルカメラ」とは、人間の目では見られない光の波長を撮影できるカメラです。
人間の目は赤・緑・青の3つのバンド(色の数)を見ることができ、その3つの色の組み合わせで物体の色を判断できます。

私たちが写真撮影などで使っている一般的なカメラも同じ原理で、色を英語で表したときの頭文字をとり、RGBカメラとも呼ばれます。
しかしハイパースペクトルカメラは10個~数百もの色の波長を読みとることができます。また、読み取る色の波長数が一桁程度の「マルチスペクトルカメラ」も存在します。

 

ハイパースペクトルカメラの原理を解説

一般的なRGBカメラでは人間の目で見たものと同じ情報、いわゆる平面(二次元)のイメージを取得します。

しかしハイパースペクトルカメラで対象物を撮影すると、二次元の情報だけでなく、波長情報も得ることができます。

 

様々なスペクトル帯ごとにグレースケール(白黒)でデータを得ることができ、

それを組み合わせることによって擬似カラー画像を取得できます。この擬似カラー画像から、目には見えない様々な情報を読み取ります。
ハイパースペクトルカメラの特性は、既に農業や工業における様々な場面で活用されています。具体的な活用事例を次の項目で紹介していきます。

 

 

ハイパースペクトルカメラが可能にすることとは

ハイパースペクトルカメラを使うことにより、人間の目には見えない色や材質、成分の違いなどを判別できます。そして以下のような事柄に生かすことが可能です。

・質が違うものを見分ける
・色のわずかな違いを見分ける
・植物などの活性度を調べる
・水分量を判別する

材質の違いや色の違いを見分ける働きは、様々な産業分野において活用されています。工場のライン上での異物混入検査、

リサイクルにおける分別においては実際にハイパースペクトルカメラが導入されており、非常に重要な役目を果たしています。
また、植生や樹木の管理においても、ハイパースペクトルカメラを用いた樹木の種類判別や枯木の調査が実際に行われています。

植物に含まれるクロロフィル(葉緑素)の量によって波長が異なるため、その波長を調べることで活性度を調べることもできます。
そしてハイパースペクトルカメラにできることのひとつに「水分量を測定する」という事もあります。いったいどのような原理で水分量を測定できるのか、

そしてそれが具体的にどのような場面で活用できるのかを、具体的に解説をしていきます。

 

 

ハイパースペクトルカメラは水分の分析も可能

光は波長の長さによって、波長が短い順より「紫外線・可視光線・赤外線」に分類することができます。可視光線とは目に見える光のことです。

ハイパースペクトルカメラを用いると、目に見えない紫外線と赤外線の波長をとらえられます。また、赤外線はさらに近赤外線・中赤外線・遠赤外線の3つに分類されています。

水分はその中の近赤外線を吸収する性質があります。その性質を利用することにより、ハイパースペクトルカメラで水分の分析を行うことができます。
水分を含んでいるものをハイパースペクトルカメラで撮影すると、近赤外線の反射率が低い、つまり反射せずに吸収されていることが分かります。

それを検出することにより水分の含有量を測定し、画像データとして残すことができます。

 

 

水分を分析することで可能になることは?

水分を分析することにより、具体的に以下のようなことが可能になります。
・水分の発見・比較ができる
・材質が違うものを見分けることができる
・作物の鮮度を見ることができる
これら3つのそれぞれの項目について詳しく解説をしていきます。

 

水分の発見・比較ができる

スペクトルデータを分析することにより、物質内に含まれている水分の量を比較したり、水分が多い部分を発見したりできます。

ドローンなどを用いて広範囲を撮影することにより、水分量にムラがないか、水分が多い部分があるかどうかを相対的に判断することができます。

材質が違うものを見分けることができる

見た目が似ていて目視ではなかなか区別がつかない物は、ハイパースペクトルカメラで撮影をし、水分量を調べることで区別ができるようになります。

作物の鮮度を見ることができる

葉物野菜は収穫後から含有水分量が減っていきます。ハイパースペクトルカメラを用いて作物の水分量を調べることにより、収穫からの経過日数や鮮度を確認できます。
次の項目では、具体的にどのような場面でどう活用されているのか、具体的な活用事例を紹介します。

 

実際の活用事例を紹介

ハイパースペクトルカメラを用いた水分分析は、実際に様々な場面において活用されています。ここではその例を6つ紹介します。
・かみ込み検査
・木材や紙の品質向上
・土壌の水分量の判定
・水分ストレス測定
・外見が似ている物の判別
・塗装ムラの発見

 

かみ込み検査

食品関連の工場における梱包では、プラスチック系の袋に製品を入れ、熱で密封処理を行いますが、そのシール部分に食品の一部が入ってしまうことがあります。

かみこみに気づかず出荷すると内容物が劣化する危険性があるため、検査などで発見をしなくてはいけません。
その際に役立つのがハイパースペクトルカメラです。水分が近赤外線を吸収するという特性を生かし、工場のライン上でのかみ込み発見に活用されています。

木材や紙の品質向上

木材や紙の加工において、水分量は非常に重要です。紙の場合、水分が多く含まれている部分があると曲がりやうねりの原因となります。ハイパースペクトルカメラで撮影を行い、

加工後の紙の水分分布を把握することにより、紙の品質向上に繋げています。木材の加工分野においても似た活用事例があります。木材は水分量が少ないほど質がよいとされています。

しかし天然木は個体や部位によって水分量に違いがあるため、そのまま加工を行うと水分量にムラが生まれます。

ハイパースペクトルカメラを用いて水分量を管理することにより、木材の品質工場に役立てることができます。また、天然木から切り出しを行う木材だけでなく、合板の加工においてもスペクトルカメラが活躍しています。

合板は複数の木材を接着して製造しており、接着層の厚さや接着度が品質に大きな影響を与えます。接着層の厚さの測定においてハイパースペクトルカメラが利用され、品質向上に役立てられています。

土壌の水分量測定

耕作地は、すべての場所が同じ水分量とは限りません。水はけや日当たりなど様々な条件により、水分量に若干の違いが生まれます。

ハイパースペクトルカメラで耕作地全体を撮影することにより、水分量のムラを画像で把握することができます。次で説明をする水分ストレスの予防にも繋がります。

水分ストレス測定

植物は水分があるときは光合成を行い、自ら栄養を作ることができます。

しかし水が不十分な状態になると、気孔を閉じて光合成を止め、蓄えた養分で耐えようとします。この状態を水分ストレス(水ストレス)と呼びます。
水分ストレスが起きると生育が遅れたり、葉が脂厚化したりします。この水ストレスの早期発見にハイパースペクトルカメラが活用されています。

撮影をすることで水ストレスに曝されている植生が分かりますので、早期対策を行うことができます。

外見が似ている物の判別

前の項目でも紹介を行いましたが、ハイパースペクトルカメラは外見が非常に似ているものを区別するのに非常に役立ちます。
農業においては、収穫後のジャガイモと石の区別などにハイパースペクトルカメラが利用されます。

丸みを帯びた石はじゃがいもに似ているため、目視で区別するには若干の時間を要しますが、カメラで撮影を行えば瞬時に石を発見し取り除くことができます。

塗装ムラの発見

水分量を測定できるという特性を生かし、塗料の塗装ムラを発見することもできます。乾燥前の塗料は水分を含んでいるため、多く塗られている部分は水分量が多くなります。

目視では塗装のムラを見つけることは困難ですが、ハイパースペクトルカメラを用いれば安易に発見が可能です。

水分量を測定できるという特性だけでも、実に多くの事例に利用されていることが分かりますね。

今後ハイパースペクトルカメラはどのように活用されていくのでしょうか?

 

今後の展開の予想について

ハイパースペクトルカメラの活用について、今回紹介した具体例はごく一部です。

ハイパースペクトルカメラが産業分野に広まったのはつい最近ですので、カメラの活用については現在も様々な論文・研究結果が次々と発表されています。

それに伴い、ハイパースペクトルカメラの需要は年々高まってきています。
スペクトルカメラの歴史とあわせ、今後の展望について詳しく解説を行います。

 

ハイパースペクトルカメラの需要は年々高まっています

ハイパースペクトルカメラはかつて非常に高価でした。しかしSPECIM社が初の産業用ハイパースペクトルカメラを生み出し、

カメラの大量生産体制を整えることに成功。価格が大幅に下がることで民間にもハイパースペクトルカメラが広まり、その能力が様々な領域で認められるようになっています。

ドローンへ搭載できるカメラの発売

ハイパースペクトルカメラは価格が高いだけでなく、本体が非常に大きいことが短所でした。しかし近年では小型化が進み、

ハイパースペクトルカメラよりも小型で安価なマルチスペクトルカメラや、モバイルタイプのハイパースペクトルカメラなどが販売され始めました。
小型化されたハイパースペクトルカメラやマルチスペクトルカメラの販売により、ドローンへスペクトルカメラを搭載した高所撮影が可能になり、

農業や林業など、広い土地を管理する産業において重宝されはじめています。
今までは膨大な日数を要していた農地の調査や、森林の樹木調査などがハイパースペクトルカメラを用いることにより非常に短時間で行えるようになりました。

今後もハイパースペクトルカメラの活用事例はどんどん増え、私たちの生活にとって重要な位置を占めるようになるでしょう。

 

まとめ

この記事では、ハイパースペクトルカメラが水分量を分析できること、そしてその活用事例を中心に解説を行いました。最後に要点をまとめましょう。
・ハイパースペクトルカメラは多くの光の波長を撮影するカメラ
・光の波長を解析することで水分量が測定できる
・水分量を知ることで様々な事に活用可能
・今後も活用事例が増えていくことが予想される
ハイパースペクトルカメラは人の目に見えない光の波長を調べるカメラで、紫外線や赤外線の波長を撮影可能です。

水分は近赤外線を吸収する性質があるため、近赤外線の吸収度合を調べることにより水分量を測定することができます。
水分量を知ることで、土壌の水分量や植物の水分ストレス測定、加工木材や紙の品質向上など、様々なことに生かすことができます。

外見が似ている物の判別やかみこみ調査、塗装ムラの発見など、実際に多くの場面で活用されています。
水分量の測定によってどのようなことが分かるか、この記事でいくつか事例を紹介しましたが、

それ以外にも様々な活用事例が論文などで活発に発表がされています。ハイパースペクトルカメラの活用については今後も研究が進み、各産業分野で重要な役割を担うことが予想されます。

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